自分を攻略していく記録

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中東のシリコンバレーことイスラエルはどんなところなのか

中東のシリコンバレー と言われたり、 スタートアップが盛んである という噂だけはよく聞くイスラエル。実際どんなものだろうとずっと気になっていたので2月末に10日間ほど行ってきた。

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もくじ

  • イスラエルの概要
  • スタートアップを取り巻く環境について
    • 資金について
    • 人材について
  • イスラエルでのペイメントの様子について
  • イスラエルのcryptoについて
    • 取引所・販売所
    • ICOした案件
  • まとめ

イスラエルの概要

場所は以下の画像の通り。北にレバノン、北東にシリア、東にヨルダン、南にエジプトと接しており、地中海や紅海とも面している。ポーランド航空で行ったのでポーランドで乗り継ぎをして合計で15時間ほどかかった。

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国全体の人口は900万人弱で、東京の人口は1400万人なのでその6~7割程度といえる。イスラエルの人口のうち75%程がユダヤ系、20%がイスラム系、5%はその他で構成されている。ユダヤ人とイスラム人は外見も多少異なり、慣れてくるとなんとなく分かるようになる。ちょうど日本人と中国人の見た目の違いのようなものだと思う。

面積は約2万㎡なので四国より少し大きいくらい。とは言っても南北に400kmくらい伸びている。首都は国際的にはテルアビブということになっている(イスラエルエルサレムと主張している)。

物価は日本より少し高い。首都テルアビブの物価は東京より高く、外食をするとお昼でも一食1000円では足りないくらい。

治安については、ガザ地区のような危険なエリアに行かない限り問題ない。テルアビブは普通に都会で夜中に出歩いても危険を感じることは一切なく、北朝鮮のリスクを考えると、日本もイスラエルも危険度合いという面ではあまり変わらない気がする。街中に軍服を着てライフルを持った人がウロウロしているのが日本では見ない光景だった。男性だけでなく女性もライフルを持っていた。

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公用語ヘブライ語だがほとんどの現地人が英語を話せる。イスラエルには旧ソ連の方からやってきた人も多く暮らしており、ロシア語を話す人もちらほら見かけた。ヘブライ語は右から始まるのでGoogle Chromeが現地では右寄せになったし、現地の人のインスタ等いろんなアプリが左右反対にローカライズされていた。

会話する分には英語で問題ないのだが、バス停の名前や無人レジは英語がないので非常に苦労をした。

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以下の資料によると、国民一人あたりのベンチャー投資額・科学者技術者の数・M&Aの数が世界一であると説明されている。とにかく小さな国なのにいろいろなものが生まれているという点で注目を浴びている。

http://sip-vc.com/wp-content/uploads/2013/01/SIP-Israel-Presentation_ver1.pdf

スタートアップを取り巻く環境について

現地ではMangrove Capital PartnersTLV GeneratorSamurai Incubate IsraelJakore、Yahoo Israelといった会社を訪問した。余談だが、イスラエルには8000強のスタートアップがあり、毎年1000近くのスタートアップが生まれてきているらしい(スタートアップの定義は聞いていないので詳しくはわからないが...)。

資金について

実は投資額自体はここ数年で減少しているそうだ。理由としてはウォルマートやコカコーラ等のアメリカの巨大な会社のR&D機関が進出して盛んに人材採用を行っていることが挙げられる。他にも有名な大企業がこぞって進出してきている。

国内の資金である程度賄うことができているのでお金を出すだけの海外のVCが嫌がられるという話もあった。日本から投資を行う場合は、日本でのBizDevやマーケティング等の支援を行うなり資金面以外のサポートがないと良い企業は見つからないようだ。

政府によるスタートアップに対する取り組みが積極的で、国からの補助金制度がある。OCS(Office of the Chief Scientist)と言って、IPの国外持ち出しができないことが条件になるが、最大で3000万円相当の補助金がもらえる。他にも法人税が比較的有利になっているという利点もある。

人材について

まず、危機管理能力が高い。Jakoreの方から伺った話だと、明日が来るのかわからない精神で生活しているから、数年先のものを作るというよりは勢いでプロダクト・サービスを開発することが特徴的だそうだ。たしかに現地の人と話していると、失敗に対する捉え方が日本のそれとはぜんぜん違うと感じた。 起業してうまく行かなかったとしても、それはそれで新しいこと(その事業は成功しなかったということ)を学べたんだから失敗なんてものはないよ とドヤ顔で言われたのが忘れられない。明日が来るかわからない精神で、なおかつM&Aでの成功体験を目撃することが多いため、起業家精神が育つのだと実感できた。

意外だったこととしては、多くのプロダクトの開発(伺った話によると9割もの開発)は旧ソ連の方にアウトソースしているということだ。イスラエルというとハッカーのイメージが強く、みんなプログラミングをしているのかと思いきやアルメニアや東欧の方でオフショア開発をしている。そのため、優秀なエンジニアはロシア語も使えるらしい。

エンジニアとしてイスラエルで活動している日本人はほとんどいないようだった。たしかに、英語が話せるだけでなく、ロシア語が使えないと苦しかったり、上下関係や議論の仕方が全く異なるイスラエル人の中にエンジニアとして交じるのはなかなかに大変だと感じた。

その他

イスラエル国内のマーケットは非常に小さいため最初からグローバル展開を視野に入れることが多い。なので多くのプロダクトが英語でローカライズがされている。国内のマーケットがないせいで、BizDevが非常に苦手なようだった。

現地で長年働いている日本人に、イスラエルで働くならどの職種の人がいいか尋ねたところ、技術大好きなプロダクトマネージャーがフィットするかもしれない、と教えてもらった。逆にプロダクトのことを細部まで知らずにフワッとした指示を出すディレクターは嫌がられると思う、とのことでした。

イスラエルのペイメントの様子について

AnyPayという会社でFinTech(特にペイメント事業)に携わっているので、現地のお金の利用についても見てきた。

現金

現地の通貨はシェケルといい、ILSという単位で表記される。1ILSがおよそ30円くらいになる。現金が必要になるシーンは日本と同じくらいあると思う。その気になれば現地の人は現金をほとんど持たなくても生活できるが、観光客は現金がないと厳しい、というイメージだ。例えば、タクシーに乗ると現金以外の支払ができなかったし、場所によってはトイレに入るのにも硬貨が必要なケースもあった。あとは、ちょっとした小物が売っているお土産屋も現金のみでの支払いだった。

電子マネー

公共交通機関で利用できるプリペイドカードはみんな利用していた。公共交通機関は、電車もあるようだが、基本はバスになる。

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クレジットカード

利用できる場所で言うとこれもまた日本と同じくらい、だと思う。日本との大きな違いとしては、レストランでは、みんなが自分のクレジットカードをお店に出して、複数枚のクレジットカードで支払いをする文化が根づいていることだった。日本でもできるにはできるようだが、そんなことをしている人は見たことがない。

モバイル決済・送金

クレジットカードでレストランにて割り勘をする習慣があるので、モバイル決済・送金に対する馴染みがないようだった。以下現地で教えてもらったモバイル決済関連のものを紹介する。

Pepper

www.pepper.co.il

Pepperというサービスで個人の銀行間送金アプリで、C2Cで利用される。ほとんどまだ利用されていなさそう。

Colu

www.colu.com

もう一つ、Coluというサービスで、こちらは消費者がローカルな小規模のお店に支払うことに特化したサービス。店頭で買うよりも10%オフだったり、アプリにデポジットする時に10%プラスされる、といったポイント還元がえぐい。アプリを開くと、登録しているお店のリストが出てきて、アプリ上でそのお店の詳細を見たり、欲しいものをアプリ上で買うことができる。

お店のリスト お店の詳細 クレカでアプリに入金
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Coluは現状まだ、法定通貨での支払いになるが、2018年2月にICOを実施しており、目標の$50Mの半分も届かなかったものの、$23M近く集めていた。サービス上でお店が独自のトークンを発行できるようになり、支払いだけでなく他の機能を持たせられるようになるという。

cln.network

イスラエルのcryptoについて

結論から言うと非常に盛り上がっている。暗号通貨のトレード自体は国の規制の影響で流行っておらず、ICOや技術開発が盛んな印象を受けた。たとえばEnigmaや、Bancorイスラエル発のICOである。話していてもビットコインの価格が〜という話題には全くならなかった。日本のcrypto市場には非常に興味を持っているようだったが、どうやって関わればいいのかわからず困っているようにも受け取れた。逆に、日本からイスラエルのそういう市場を見に来る人も非常に増えてきている(実際に遭遇した)。

取引所・販売所

Bits Of Gold

bit2c.co.il

EUR/USD/ILSでBTC/ETHを購入のみできる販売所である。

Bit2C

www.bitsofgold.co.il

BTC/LTC/BCH/BTGの取引所。出来高は極めて小さい。bitFlyerと比較すると0に等しいくらい。

Coinmama

www.coinmama.com

クレジットカードでBTC/ETHを買える販売所。日本でクレジットカードで買うより手数料が安い(bitFlyerも3月9日以降クレジットカード購入は停止をしているので日本では実質できないかも)。

ICOした案件

日本で大きなICO案件としてはALISが有名だが、それより大きいICO案件がイスラエルでは多く生まれている。長くなってしまうので、以下リンクだけ貼っておく。

www.enigma.co

bancor.network

Wings – DAO Platform

sirinlabs.com

coindash.io

https://saga.org/currency

まとめ

日本の技術力は全然負けていないし、むしろ技術力という点ではイスラエルより上なのではないかと思った。ただ、中東のシリコンバレーと言われるだけあって、起業家精神が国民に根付いているのが大きな差だと感じた。逆に言うと、危機意識から生まれる起業家精神シリコンバレーと言われる所以かと思う。ただ、明治維新や戦後の日本も同じように国全体が危機感を持って前進していたはずなので、そういう不安定な環境に置かれるとイノベーションが起こりやすくなるのだろうなと感じた。